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【水質】 播州の環境対策/煙と水で高い基準/地域住民への配慮も(兵庫)

 日本に立地する染工場にとって環境対策は生き残りへの必須条件。さらに海外との競合の際にはそれが優位点にもなる。播州織産地には糸染めの染工場や生地の加工場が複数存在するが、各社が日進月歩の勢いで対策を進めている。

 染工場の環境対策は主に水質と大気。瀬戸内海は日本で最も環境規制の厳しい水域と言われる。播州の染工場から出る排水は加古川を下って瀬戸内海に流れ出る。染色組合加盟各社が、「水質汚濁防止法」「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づく総量削減基本方針により、化学的酵素要求量、窒素含有量、リン含有量といった水質の良しあしを判別する代表的な数値について、日本で最も厳格な規制を課せられている。さらに今年5月には第7次規制として規制数値が厳格化されており、各社がこの対応を推進している。


出典: 2012/08/30 繊維ニュース
  播州の染工場から出る排水は独自の処理工場で浄化される。処理されたスラッジ(汚泥)は別の処理場に運搬され、砂状にされた後、未利用資源に加工される。その処理原料は別の処理場に運搬され、食品工場から排出される未利用資源と混ぜ合わされ、栄養価の高い有機肥料となる。“再利用”という点で他産地からも注目される取り組みだ。

 先染め織物は糸を染めるのが最大の特徴で、排水には様々な色が付く。排水の色自体に規制はないが、「地域住民への配慮」として各社は自主的に勉強会を開くなどで脱色技術の向上に努めている。播磨染工が年に2回、周辺の河川の清掃作業を行うのも「地域住民への配慮」という観点だ。

 大気汚染の規制も年々厳格化の方向。基本的に年に2回の測定があるが、抜き打ちの検査もあるという。染工場各社は規制値に合わせるために、重油の種類を変えるなどの対応を進めている。「(規制への対応は)収益面で厳しくなるが、対応することが海外との差別化にもつながる」(播磨染工)という意識だ。

 中国やアセアン地域でのモノ作りは日本と比べて安価な点が魅力。しかし、環境保護という点では日本が数歩先を行く。中国など諸外国でも国際的な注視を背景に環境保護の機運が高まっているが、日本の規制値や産地企業の高い意識には及ばない。

 環境保護にはお金がかかる。消費者やアパレル、生地商といった産地の需要家はこのことをもっと知るべきだし、産地としてもさらに強くPRに努めていくべきだろう。


出典: 2012/08/30 繊維ニュース
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