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【廃棄物】フェロシルト問題 15年度中に処分完了へ 四日市工場 信頼回復へまだ課題(三重ほか)
化学メーカー・A社(大阪市)が有毒物質を含む土壌埋め戻し材「フェロシルト」を製造、販売した問題で、東海3県などの使用先45カ所からの撤去と処分が2015年度中に完了する見通しとなった。四日市工場(四日市市)では6月、仮置き分の本格的な処分作業が始まった。問題が表面化して9年。フェロシルトを機に不正がまかり通っていた体質が露呈した同社の信頼回復への道は、まだ途上にある。
A社は、フェロシルトを76万6千トン製造し、72万1千トンを販売。問題発覚後の2005年から撤去と処分を始めた。撤去の際に周辺の土も混じり、全体の処分量は186万トンに上る。
現在、未処理なのが四日市工場の仮置き分20万トンと愛知県瀬戸市の使用現場に残る8万トン。四日市工場の仮置き分は、今年6月に入り、県環境保全事業団管理の新小山最終処分場 (四日市市小山町)への搬入に対し、運搬時に飛散しない措置を取る条件で、四日市工場と処分場の地元の同意を得た。14・6万トンを新小山へ、残りを九州の処分場へ運ぶ。新小山は防水シートで地面を覆い、有毒物質の漏出を防ぐ設計になっているという。
処分作業の先は見えてきたが、四日市工場の地元に住む男性は「どうしてここまで長期化したのか。津波が来たら仮置きの山が流され、周辺が汚染される恐れがある」と疑問と不安を口にした。
A社によると、処分費は600億円になるが、5年ほど前から主原料のチタン鉱石の値上がりで業績が悪化。また、いったん土に混ぜたフェロシルトだけの除去は難しく、浅く埋められた場所ばかりでない。瀬戸市の現場は地下28メートルに達し「安全を確保しながら作業しており、時間がかかるのはやむを得ない」としている。
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もう一つ、「めどが立たない」とするのが、社内調査の結果で明らかになった高濃度のヒ素など有害物質が検出された四日市工場の地下水の浄化。汚染域は70ヘクタールの敷地に点在し、複数の井戸を掘ってろ過器を設置したり、雨水が染みこんで有害物質が浮上しないよう舗装したりした。
大半が戦前から昭和50年代にかけて使用していた鉱石の破片を放置したのが原因とみられ、学識経験者による第三者委員会の調査結果を踏まえながら、抜本的な解決を急いでいる。
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四日市工場で5月末、住民も見学する中で社員が防災訓練を繰り広げた。塩浜連合自治会の 男性役員は「雑然としていた工場内もきれいになった。そもそも工場見学なんてなかった」と評価。
「フェロシルト問題も道半ばだが、計画通りに着々と進めてほしい。昔の会社には戻らないで」と語った。四日市工場の久本哲也法務担当は「地元の方々に一日でも早く安心してもらえるよう、透明性のある工場経営を続けるとともに、信頼回復へ最善を尽くしたい」と話している。
◇ 視線
「以前は不正があっても表に出せなかったが、今は違う。悪いことは悪いと言える」。社員の一人が、社内の体質改善や地に落ちた信頼を取り戻すための道のりをたどるように真顔で言った。
企業の不祥事を取材する場面もあるが、広報担当者は体裁を気にした対応が目立ち、特定の個人に責任をなすりつける例も少なくない。石原産業の問題は企業モラルのあり方を如実に示している。一企業の話でなく、参考になる部分も多いはずだ。
(メモ) 土壌埋め戻し材「フェロシルト」問題
1998年から、土壌埋め戻し材「フェロシルト」を四日市工場で製造。三重、愛知、岐阜、京都の4府県で使われた。三重県はリサイクル製品に認定したが2004
年、愛知県瀬戸市でフェロシルトが川に染み出し赤く濁るのを住民が発見したのを機に、使用先で六価クロムなどの検出が相次ぎ社会問題化。刑事事件に発展し、廃棄物処理法違反の罪に問われた当時の副工場長が実刑判決(確定)を受けるなどした。07年に社長交代。08年、社内調査の結果として、化学兵器にも使われる有毒ガス「ホスゲン」の無届け製造や工場敷地内の地下水から基準値の500倍のヒ素が検出される事態など9件の不正を公表した。
出典: 2013/08/01 中日新聞朝刊
参考: 石原産業株式会社 「フェロシルト問題」について
http://www.iskweb.co.jp/feroshilt/index.html