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【廃棄物・リサイクル】港スクラップに家電混入・炎上 環境省指導に対し、業者「売り物」と反論(福岡など)
港や貨物船に積まれた輸出用の金属スクラップが燃え上がる火災が相次いでいる。その多くは金属類の中に無分別に混入された使用済みの家電や車のバッテリーが原因という。環境省は「廃棄物処理法に違反する」と廃家電を交ぜて輸出しないよう指導しているが、業者からは「家電は売り物であり廃棄物ではない」との反論もある。同省は「廃棄物」の定義をより明確にするガイドラインを作るなど規制強化を検討している。
福岡市東区の住宅街で昨年10月28日午後、プラスチックが燃えたような異臭がすると119番が相次いだ。2キロほど離れた東区箱崎ふ頭で山積みにされていた大量のスクラップが約10時間にわたって燃え続け、その黒煙が住宅街にまで広がってきていた。
海上保安庁によると、スクラップ積載船の火災は昨年1年間に全国で11件あり過去最多、うち5件は九州で起きた。
環境省は昨年、スクラップが保管されている全国の港の立ち入り検査を行い、金属のくずの中に家電などを交ぜている業者を指導した。しかし、指導を受けても輸出を続ける業者は少なくない。
同省によると、使用済み家電の中でも家電リサイクル法が定めるエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目をスクラップに交ぜて輸出するのは廃棄物処理法違反になり、行政処分の対象となる。一方、その他の小型家電は、製品の使用状況や処理過程などによって廃棄物にあたるかどうかが判断される。環境省が「廃棄物だ」と指摘しても、業者は「お金を払って買い取った有価物。ごみを輸出しているのではない」と反論するという。現行法では廃棄物の定義が明確ではないため「強く指導ができない状況でもある」(同省)という。
環境省は、家電4品目以外の使用済みの小型家電についても、何が廃棄物にあたるかを具体的に示すガイドラインを作成中。海上保安部や税関などと協力し、保管場所の見回りも強化している。
スクラップ火災の問題について研究する国立環境研究所国際資源循環研究室の寺園淳室長は「使用済みの家電などが交ざった金属スクラップは、火災の危険だけでなくフロンや鉛などの有害物質が含まれる問題もある。国や自治体の監視、規制といった対策に加え、私たちも、業者に安易に使用済み家電を手渡さないようにすることが求められる」と話す。
出典: 2013/01/30 西日本新聞朝刊