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【水質汚濁】 利根川・化学物質検出:群馬の業者、排出認める 原因物質含有「聞かされず」(群馬)

 利根川水系の浄水場で水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県高崎市の産業廃棄物処理会社・A工業が25日、取材に対し、原因物質を含む廃液の排出を認めた。

廃液は埼玉県本庄市の金属加工メーカー・B社の化学工場から委託されたもので、A工業は「B社から原因物質が含まれていると聞いていなかった」と説明している。

出典: 毎日新聞 朝刊 2012/5/26


  原因となる化学物質はヘキサメチレンテトラミン(HMT)。浄水場などで消毒に使われる塩素と反応すると、有害物質のホルムアルデヒドを生成し、千葉県内では今月19日に最大34万世帯以上が断水した。
 A工業によると、B社から受け入れた廃液約60トンを処理プラントを通した後、利根川に注ぐ烏川へ流した。

 プラントは中和処理するためのものでHMTを除去する能力はなかったという。
 廃棄物処理法は、委託の際に廃棄物の性質などを書面で告知するよう規定している。群馬県警は廃棄物処理法違反容疑での立件も視野に入れ、捜査を進める方針。

 ◇委託元、03年も流出 法規制なし
 HMTはアミン類の化学物質で、水質汚濁防止法などで規制される有害物質ではない。法令違反の可能性を挙げるなら、廃棄物処理法が定める委託先への告知義務違反があるが、今回排出した事業者らの法的責任を問えるかどうかは不透明だ。
 B社は取材に「HMTそのものの数値は説明していない」と認めた上で「通常の業者なら、(書面の)廃液の分析値から分かると思った」と釈明。一方、A工業の社長は「HMTが含まれていると知っていたら受け入れなかった。ぬれぎぬを着せられたようなものだ」と憤るなど、言い分は食い違う。
 埼玉県の水環境課長も25日の記者会見では「有害物質ではないことを告知しないことが法的に問題となるのか、よく詰めないと分からない」と述べるにとどめた。
 ただ、B社は03年11月にもHMTを流出させ、下流の行田浄水場(埼玉県行田市)でホルムアルデヒドが検出された。それだけに水環境課長は「河川に放出すればホルムアルデヒドになって障害を生じることは知り得ていたので、道義的責任は十分ある」と批判した。
 東京農工大大学院の細見正明教授(環境化学工学)は「HMTそのものに毒性があまりなく、環境中に分解されやすいという特性がある。塩素消毒でホルムアルデヒドができるといった情報もあまりなかった」と指摘。「これだけ大規模な被害が出たのだから、同法でHMTを規制するか検討が必要」と話す。
 関東地方知事会議は23日の会合で、原因物質となるHMTなどのアミン類について、国に法規制を求める方針を決めた。だが、アミン類は数百種類もあり、規制の在り方が課題になりそうだ。

 ◇高度浄水、進まぬ普及
 関東地方の7都県や広域水道企業団が運営し、河川や湖沼を原水とする浄水場66カ所のうち、異物を取り除く効果が高い「高度浄水処理」を導入しているのは約35%の23カ所にとどまっていることが各都県への取材でわかった。今回のホルムアルデヒド検出問題は高度処理導入の有無が住民の生活を左右したが、費用などがネックとなって導入が進まない事情もある。
 各都県によると、高度処理をしている浄水場(導入率が100%でない施設を含む)は東京5、千葉7、埼玉1、茨城8、群馬2。今後具体的な導入計画があるのは千葉2、茨城1、群馬2だった。
 高度処理はろ過や塩素消毒など従来型の処理に加え、水中にオゾンを発生させるなどして有機物などを除去する。今回の問題では千葉県松戸市で、取水口が同じ2浄水場のうち高度処理をしている「ちば野菊の里浄水場」の浄水は基準を下回ったが、処理していない「栗山浄水場」は基準以下にできない恐れがあったため、県が取水停止を繰り返すなどの事態が起きた。
 厚生労働省は都市部の下流域にある浄水場は高度処理導入が望ましいとするが、千葉県の担当者は栗山浄水場について「財政面の都合がつかず、導入時期は未定」と話す。埼玉県によると、県内最大の「大久保浄水場」(さいたま市)で高度処理施設を建設すると、約395億円かかると試算されている。東京都でも導入済みの5浄水場の導入率を100%にするまでに約2300億円かかるという。

出典: 毎日新聞 朝刊 2012/5/26

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