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【大気・労災】 胆管がん発症の印刷会社強制捜査、大阪労働局(大阪)
大阪市の印刷会社・A社の元従業員らが胆管がんを相次いで発症した問題で、厚生労働省大阪労働局は2日、元従業員らの健康や安全確保の対策を怠った疑いが強まったとして、労働安全衛生法違反容疑で同社などを家宅捜索した。容疑が固まれば、法人としての同社などを同法違反容疑で書類送検する方針。
田村憲久厚生労働相は2日の閣議後の記者会見で「刑事事件なので慎重にしっかりとした取り組みをしていきたい」と述べ、刑事事件として立件する方針を明らかにした。
厚労省は昨年、労働安全衛生法で定める事業主義務を果たしていないとして同社に是正勧告した。同局によると、(1)定期健康診断結果の報告をしていない(2)衛生管理者や産業医、安全管理者を置いていない(3)衛生委員会がない――などの違反があったという。
大阪労働局はこうした会社側の不備が被害を広げる背景にあったとみて、強制捜査に踏み切ったとみられる。
厚労省は3月にまとめた報告書で、胆管がんを発症した従業員は有機溶剤を含む洗浄剤を使って印刷機械などに付着したインクを落とす作業に従事。洗浄剤に含まれる化学物質「1、2ジクロロプロパン」に長時間、高い濃度でさらされたことが胆管がんの発症につながった可能性が高いと指摘していた。
労災請求した同社の元従業員ら16人については、同省が3月27日に労災認定した。同社の社長は翌28日に大阪市内で記者会見し、「大変申し訳なく、補償も検討する」と謝罪した。ただ、がん発症と職場環境との因果関係は「分からなかった」とし、危険性の認識は否定している。
出典: 2013/4/2 日本経済新聞電子版ニュース